「大丈夫」という言葉ですれ違いが起きる時の心理

― 母が娘との関わりから気づいたこと -

自分の既成概念に気づき、自分と相手をともに活かす交流をめざす
『セルフカウンセリング』を普及するNPO法人です。

 

イメージ写真
写真はイメージです(PhotoACより)

私たちは“言葉”を用いて、周囲の人と対話をしています。

生まれ育った環境や習慣によって、その人が用いる“言葉”には違いが表れます。

 

その人が用いる“言葉”の違いは単語一つにも表れます。

単語一つの使い方、捉え方によって、相手との話がかみ合わなかったり、互いの気持ちがズレたりすることもしばしば起こります。

 

その、分かりやすい例のひとつが「大丈夫」という言葉です。

「大丈夫」という言葉は大変便利な言葉です。

うまくいっている時に「大丈夫」と言いますが、うまくいっているのかどうか確認する時にも「大丈夫?」と言いますね。

 

ある時、マスミさんは、出産した娘さんとの間で「大丈夫」という言葉がキッカケとなりくい違いが生じました。

その時の体験をお伝えしましょう。

 

■ 娘に感謝されることを期待していたの?

(マスミさんの体験)

 

先日、娘とのやりとりで気持ちのズレを感じたことがありました。

ギクシャクした関係をなんとかしたいと思い、セルフカウンセリングの専用のフォーマットを用いて自分と娘との関わりを書いて、見つめることにしました。

 

【娘との場面状況】

娘の産後サポートの為、私が娘の家に滞在した時の、夜中2時頃の出来事です。

 

【娘との場面の記述(自分と相手のやりとり)】

私は〈まだ、赤ちゃんが泣き止まないなあ。

こんな夜中に赤ちゃんに泣かれて娘は困っているだろう。

手伝うことがあるかもしれないから、様子を見に行こう〉と思いました。

私は娘のいる部屋に行きました。

私は娘を見ました。

私は〈あら、やっぱり大変そうだな。

私が手伝ったら、娘の助けになるかな〉と思いました。

娘は赤ちゃんを抱いていました。

私は〈やっぱり少し代わってあげよう。

そのために私がいるんだから、手伝わなくっちゃね。

手伝うことがあったら言ってほしいな〉と思いました。

私は「大丈夫?」と言いました。

娘は「大丈夫だから、今は来なくて良いわ」と言いました。

私は〈せっかく、手伝ってあげようと思ったのに〉と思いました。

 

 

娘と交わした会話は、

「大丈夫?」

「大丈夫だから、来なくて良いわ」だけでした。

確かに、娘は「余計なことをしなくて良いのに!」と

言った訳ではなく、「大丈夫だから、今は来なくて良い」と言っています。

 

しかし、私は、夜中の2時に手伝ってあげようと思っている気持ちを、娘に拒否されたと思っていました。

〈手伝うことがあるかもしれないから、様子を見に行こう〉

〈せっかく、手伝ってあげようと思ったのに〉

という心のセリフ(心の中で思ったこと)に、この時、私が娘に拒否されたと思ったことが表れています。

 

私は自分で書いた場面の記述を繰り返し読み返してみました。

すると、心のセリフの奥に、夜中に起きて、娘を手伝ってあげる私は、感謝されるに違いないという思いがあり、『娘に感謝される私』という自分の理想のイメージを作り上げていたことが分かりました。

そして、夜中に起きた私に、娘は感謝するだろうという期待感から、私に感謝してほしいという欲求があったことが分かりました。

 

自分の気持ちに気づいて、私は、娘に感謝されることを期待していたの?と、ちょっとビックリしました。

繰り返し思いめぐらしてみても、確かに感謝されることを期待していたなぁと実感が湧いてきます。

自分の気持ちをありのままに受け入れると、気持ちがスーと落ち着いてきました。

 

■ 〈そんなやり方で大丈夫なの?〉と 言われたように感じたかもしれない

 

自分の気持ちが落ち着くと、「大丈夫?」の言葉を娘はどのように受け取ったのかなぁと、新しい疑問が生まれてきました。

 

私は「大丈夫?」という表現は、相手を労わる言葉だと思っています。

ですから、この時も娘に「大丈夫?」という言葉をかけて娘を労わりたいと思っていました。

 

「大丈夫?」の言葉の中に、〈手伝うことがあったら言ってほしいな〉という思いが

含まれていましたが、そのことを言葉にして伝えてはいませんでした。

 

一方、娘は、一生懸命に赤ちゃんを泣き止ませようとしている時に、「大丈夫?」と言われて、

〈そんなやり方で大丈夫なの?〉と言われたように思ったのかもしれません。

もし、娘がそう思っていたとしたら、〈手伝うことがあったら言ってほしいな〉という

私の思いとは裏腹に、娘は〈そんなやり方で大丈夫なの?

なんて言わないで!〉と思ったかもしれないと思いました。

だとすると、私と娘の思いは大きくくい違っていたなぁと思います。

 

「大丈夫?」という同じ言葉でも、相手や、状況によって、捉え方が違うんだなぁとつくづく思いました。

 

普段なら見過ごしてしまうような、ちょっとした気持ちのすれ違いを、セルフカウンセリングの記述に書いてみたことで、何気なく使っていた「大丈夫?」の言葉を改めて考え直すチャンスになりました。

 

(セルフカウンセリングは商標登録されています)

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