先が見えない不安な時に本当に必要なことは何か?

受験時の親と子のストレスフリーな交流法

自分の既成概念に気づき、自分と相手をともに活かす交流をめざす
『セルフカウンセリング』を普及するNPO法人です。

イメージ写真
写真はイメージです(PhotoACより)

新型コロナウイルスの終息が見えない中、先行きに様々な不安を感じることが増えてきました。

 

今年、受験を控えた親子は受験がどのように実施されるのかと不安な気持ちで一杯になることもあるかもしれません。

 

ミホさんは高校3年生の娘アイさんの受験でヤキモキしていました。

娘アイさんは高校3年の春まで大学に行くと言っていたのに、この夏、急に動物病院のスタッフになるために専門学校に行きたいと言い始めたのです。

 

ミホさんはアイさんの急な変化にとても驚きました。

受験のモヤモヤする気持ちをなんとかしたいと思い、セルフカウンセリングの専用のフォーマットを使ってアイさんとのやりとりを書いてみました。

 

【ミホさんが書いたアイさんとのやりとり】

状況:夕食を食べ終えて、一息ついた時のこと

 

私は〈アイは一体何を考えてるのかしら?

今日はどうして大学に行かないことにしたのか、ちゃんと聞かなくちゃ〉と思いました。

私は「アイ、ちょっといいかな。

進路のこと、ちゃんと聞いておきたいんだけど」と言いました。

アイは「うん、別にいいけど。特に話すことはないけどね」と言いました。

私は〈えっ!何言ってんのよ。

ちゃんと話してくれないと分からないでしょ〉と思いました。

私は「何言っているのよ。

いきなり大学はやめて動物病院のスタッフになるなんて

納得できる訳ないじゃない。

理由を説明してちょうだい」と言いました。

アイは「だって何度も言っているじゃん!

自分には大学に行っても意味なんだって。

この前、テレビで観た動物病院で働きたいって思っているんだよ。

なんでそれをわかってくれないの!」と言いました。

私は〈テレビで観た動物病院なんかで働ける訳ないじゃない。

なにを夢みたいなこと言っているの!

動物だって飼ったことないのに無理に決まっている。

現実に気づかせたい〉と思いました。

私は「何夢みたいなことを言っているの。

無理に決まっているでしょ」と言いました。

アイは「ほら始まった。

だから話したくないんだよ。

もういいよ。

自分の進路は自分で考えるからほっておいてよ」と言いました。

アイは部屋から出て行きました。

私は〈やってしまった。

今日こそちゃんと話そうと思っていたのに。

また話せなかった。

アイが大学に行くことは無理なのかな。

大学まで出すのが親の役目と思っていた。

アイが大学に行かないなんて考えてもみなかった。

きっとコロナのせいだ。

コロナのせいでアイの気持ちが変わったんだ。

コロナさえなければ順調に大学に行ったのに〉と思いました。

 

ミホさんはアイさんとのやりとりを書いた用紙を自分が通っているセルフカウンセリング教室の

先生に読んでもらいました。

 

先生はこう言いました。

「ミホさんは今、不安の只中にいらっしゃるのですね。

とても心配で、歯がゆいお気持ちでしょう。

よく話して下さいました」。

 

ミホさんは先生の言葉を聞いて、救われたような気がしました。

娘のことが解決した訳ではありませんが、気持ちがスーと落ち着き、じんわりと気持ちが和らいていくことを感じました。

 

自分のありのままを受け入れてもらえたことで、安心する気持ちがココロに広がっていくのが分かりました。

 

さらに先生はこう続けました。

「ミホさんにとって大事なこととお嬢様にとって大事なことがくい違っているのかもしれませんね。

そこが具体的に見つけられると、互いの気持ちが整理して捉えられそうです。

また、共通する気持ちもあるのではないでしょうか?

それが捉えられると、互いにとっての最善策が見えてくるかもしれません」。

 

ミホさんは先生に言われた視点で、自分が書いたアイさんとのやりとりを読み返してみました。

 

ミホさんは、アイさんを大学まで出すことが親の役目と思い、大学に行ってほしいと思っていました。

一方、アイさんはテレビで観た動物病院で働きたいと思っていて、そのためにスタッフになれる専門学校に行きたいと思っていました。

ここに互いのくい違いがあることに気づきました。

共通する気持ちは、自分もアイさんも進路については大事に考えていることだと気づきました。

 

ここまで気づいて、ミホさんはハッとしました。

〈大学まで出すのが親の役目と思っていたけれど、それは私の勝手な思いだったかもしれないな。

アイのための進路を考えたら、なれるかどうかは別にして、動物病院のスタッフになるという夢に向かって進んでいくことかもしれない〉と気づきました。

 

不安な時には不安な気持ちをそのまま受けとめられると、ココロがスーと落ち着きます。

ありのままの自分を受けとめられると、不安になっている状況は変わらなくても不安な気持ちは不思議と落ち着きます。

 

その結果、互いの気持ちを大事にした交流ができていきます。

先が見えない不安な時には、ありのままの気持ちをそのまま受けとめることを意識していきましょう。

今の瞬間を大事にしながら、回りの人との交流を楽しむゆとりが生まれるでしょう。