夫婦⑤ー岸本さん(仮名)の体験記ー

写真はイメージです(イラストACより)
写真はイメージです(イラストACより)

セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。このコラムでは、セルフ・カウンセリングにまつわる様々な情報をお伝えしています。

 

セルフ・カウンセリングの創案者である渡辺康麿先生は、かつて公民館や社会教育館で、主婦の皆さんを対象にセルフ・カウンセリングの手ほどきをしていました。

そして、参加者の皆さんの体験記を、「妻たちのセルフ・カウンセリング」というタイトルで雑誌に連載していました。

その体験記の一部を、ご本人の承諾を得て、ブログで紹介していきたいと思います。

 

今回は、岸本芳恵(仮名)さんの体験記の第5回です。(全6回)

 

(前回までのあらすじ)

ご主人は、岸本さんが外出すると不機嫌になります。

岸本さんはご主人の顔色をうかがいながら外出することに窮屈さを感じています。

岸本さんは、もっと気軽に外出できるようになりたい、との思いからセルフ・カウンセリングを学び始めました。

講座に参加して、セルフ・カウンセリングの書き方のルールを学んだ岸本さん。

書き方のルールに沿って、ご主人とのやりとりを書いてみました。

記述に書いてみて、岸本さんは、自分の気持ちを素直にご主人に伝えていなかったことに気づきました。

 

岸本芳恵(仮名)さんの体験記 その5

 

◆一人で放っておかれるなんてかわいそうだな

 

なぜ、自分の気持ちを素直に夫に伝えられないんだろう。

そんな疑問を感じて、夫との関わりの場面をもう一場面書いてみました。

 

状況説明

土曜日の朝のこと。

学校で、PTAの役員会があり、私は、外出する支度をしていた。

夫は前日、深夜に帰宅し、まだ寝ていた。

 

場面記述

私は〈もう出なくちゃ。良夫さん(夫のこと)は、まだ起きてこないな〉と思った。

私は寝室を覗いた。

良夫さんは、寝ていた。

私は〈やっぱり、まだ寝ている。

昨日も帰りが遅かったから、今日はゆっくり寝ていたいだろうな。

起こすのはかわいそうだな。

このまま、寝かしておいてあげよう。

テーブルの上に、朝食の支度をしておいたから、お腹がすけば、何かつまむだろう。

家族の為に、一生懸命働いてくれているのに、休みの日は一人で放っておかれるなんて、かわいそうだな。でも、この一年はしょうがないわよね。

良夫さんだって、わかってくれているわ〉と思った。

 

◆夫が不機嫌になったわけではなかった

 

自分の中で一生懸命言い訳をしながら外出したときのことを、取り上げて記述してみました。

記述を書き終えて、講師の先生に教えていただいたように、相手欄と自分欄を分けて読んでみました。

自分欄には、夫を家に一人置いて、外出することを気兼ねする気持ちがたくさん書かれていました。

一方、相手欄には、“良夫さんは、寝ていた”という一文が書かれているだけでした。

これまで、私は、夫が不機嫌になるから、私は気を遣う、と考えていました。

けれども、このとき、夫はただ寝ていただけです。

特に、不機嫌になっていたわけではありませんでした。

私は、〈場面の選び方が悪かったかな。

夫が不機嫌になったときのことをもう一度選び直してみよう〉と思いました。

けれども、いくら思い返しても、夫が不機嫌になったときのことは思い起こされてきませんでした。

〈夫が不機嫌になったのではなかったんだ。

私が『夫は不機嫌になるだろうな』と勝手に推測して、勝手に気を遣っていたんだ〉と気づきました。

 

◆私自身が休日は家にいたいと願っていたんだ

 

私は、もう一度、自分の欄の心のセリフを読んでみました。

“昨日も帰りが遅かったから、今日はゆっくり寝ていたいだろうな。

起こすのはかわいそうだな。”

 “家族の為に、一生懸命働いてくれているのに、休みの日は一人で放っておかれるなんて、かわいそうだな。”

こんな言葉が目に飛び込んできました。私は、ハッとしました。

私は、家族のために、一生懸命働いてくれている夫に、心から感謝していたんだ、と気づきました。

だから、せめて、夫が家にいるときは、私も家にいて夫の労をねぎらいたかったのです。

私は、〈そうすることを夫が強要していたわけではなくて、私がそうしたいと願っていたんだ。

だから、そうできないと、落ち着かなくなったんだ。

外出せざるを得ない理由を作って、夫に言い訳をすると共に、自分自身にも言い訳していたんだ〉と気づいたのです。

私は、〈外に出て、友人と楽しく過ごしたり、趣味の世界を広げたいと思う気持ちも本当だし、

夫と一緒にいたいと思う気持ちも本当だ。両方とも、私が本当に願っていることなんだ〉と気づきました。

(つづく)

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コメント: 2
  • #1

    加藤 美和子 (木曜日, 25 5月 2023 14:03)

    夫は不機嫌になるだろうなーと勝手に推測していたと気付いたのですね。
    過去に不機嫌になった事実がないのですね。であれば、裏を返せば、それは、岸本さんご自身のこと。
    夫が、自分を置いて外出すると、不機嫌になるタイプなのでは?
    ご自分の気持ちを相手に投影して、勝手に思い込んで居るのかな~と、感じました。
    家族のため一生懸命働いてくださるご主人様への思いやりが出ている場面が沢山有りますね。
    休日は共に過ごしたいと言うご自分の気持ちと、外で友人と楽しみたい、という気持ちの両方あることに気付き、葛藤している様子がよく解ります。
    両方を叶えるための対策を考えたいですね。

  • #2

    加藤美和子様へ ブログ担当より (土曜日, 27 5月 2023 09:59)

    加藤さん
    岸本さんの体験記を、岸本さんによりそって読んでくださっていることが伝わってきました。
    コメントをありがとうございます。
    “岸本さんご自身のこと”というお言葉、本当にその通りだなぁと思いつつ読ませていただきました。
    私たちは、自分の思いの中で相手を見ていることが多いように思います。
    ちょっと立ち止まって、自分と相手とを分けてみることができると、自分の思いから離れて、相手との関わりをリアルに振り返る事ができますね。
    セルフ・カウンセリングは、まさにそのための方法と言って良いでしょう。
    それができると、加藤さんがお書きくださったように、“家族のため一生懸命働いてくださるご主人様への思いやりが出ている場面”が自然と思い浮かんでくるのかもしれませんね。

    ここまで、ご自分を見つめ、理解を深められた岸本さん。
    岸本さんの中にある葛藤するお気持ち、その両方を活かした解決案が見つかると良いですね。
    次回、いよいよ解決編になります。