モノサシにかかわるエピソード③

セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。このコラムでは、セルフ・カウンセリングにまつわる様々な情報をお伝えしています。

 

モノサシにかかわるエピソード

                 生江規子(東京都)

*私のモノサシ 「困っている人を助けること」

困っている人を助けるのは当たり前でしょ…という気持ちの中に、私の思い込みや決めつけ、

自己評価の思いが入っていることに気づいたのは、セルフ・カウンセリングに出会ってからでした。

思い込みが強くて、その結果挫折感や納得できない思いが残った、というエピソードを思い出しました。

エピソード③

*困っている人を助けたい

私は60歳のときに“介護ヘルパー2級”の資格を取りました。

自分の両親や夫の父はもう亡くなっていましたが、残る夫の母の介護には私も関わらざるを得ないだろうな、と漠然と考えていました。

私はお年寄りや病気の家族の世話をしたという経験がほとんどなかったので、気難しい義母の介護をすることがとても不安でした。

そこで1カ月ほどの「介護ヘルパー養成短期集中講座」に通うことにしました。

主に身体介護のノウハウを学びましたが、かつての“あこがれの看護婦さん”に近づけたように思えて嬉しくて、熱心に学びました。

資格を得たあと、講師の先生の紹介で週に2日だけヘルパーの仕事をすることにしました。

実際に仕事をしてみないと、せっかく覚えたことが身につかない、と思ったからです。

そのころは添削の活動も忙しい時期でしたが、(今よりは若かったので)なんとか両立させたいと必死でした。

実際の介護の仕事は思っていた以上に難しいものでした。

私の中には“利用者さんイコール困っている人”という思い込みがありました。

困っているから助けるべき、ということになりますが、そのような考えは、実際の仕事にはそぐわないことだったようです。

私と利用者さん、ご家族、事務所との気持ちのズレはすぐに生じてきました。

 

*自分の思い込みと押しつけに気づく

*(私)

相手の気持ちはどうか、と配慮しながら、丁寧に介護したい。

 

(相手)

いちいち聞くのは自信がないからではないか。

丁寧というより手際が悪いと思われたようでクレームがきました。

 

 *(私)

利用者さんに頼まれたことにはできるだけ応えるようにしたい。

 

(事務所)

余計なことはしないように、と再三注意されました。

 

“契約上で決められたこと(だけ)を、決められた時間内に終わらせる”ということが大事な基本だということを、私が飲み込めるまでには少々時間がかかりました。

杓子定規に思えたこの基本が意味を持っていること、“よかれ”というのは私の一方的な思い込みと押しつけだと分かりました。

 

<こういう私の押しつけは、子どもとの関わりを探究して気づいていたはずなのになぁ>

と落ち込みました。

けれども、注意されたりクレームを受けるという痛い思いをして気づくということも、この仕事ならではの貴重な経験だったと思います。

 

*モノサシを活かすということ

そのころのセルフ・カウンセリングの取り組みから、“助けたい、お役に立ちたい”という欲求の奥に自己評価欲求・自己評価不安があることに気づくことはできましたが、まだまだ頭の中での理解だったように思います。

仕事に慣れてくると、難しい対応が必要な利用者さんを担当することも増えてきました。

すると“うまくできない私”、“評価を下げるであろう私”という不安が起きてきました。

逃げたい(やめたい)思いと、でもしっかり対応したいという思いの葛藤がしばらく続いたあと、3年半続けた仕事を辞めました。

タラレバになりますが、もし私が自分のモノサシと、その奥にある自己評価欲求・自己評価不安にしっかりと向き合って自覚できていれば…と思います。

不安にかられずに、もう少し落ち着いた気持ちで、私の大事なモノサシを柔軟に活かして行く方法も考えられたのではないかな、と今の私は残念に思っています。

 

エピソード①②③の出典は、2023年7月27日第24回交流と学びの会発表原稿より


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コメント: 2
  • #1

    中川剛充 (土曜日, 21 9月 2024 08:31)

    こんにちは、自分のモノサシですね…
    介護の話しですね…私は、介護職員基礎研修課程を持っています、ヘルパー1級と同等の資格だそうです。
    私は、精神障害者でもあります、研修課程を受けて、リーダーに言われた一言が、今の自分の基礎となる元です、「自分の事が出来ないのに、人の事が出来るのか?」と言われて、最終的に自分が納得をしています。
    休み休み、少しずつでも前へ進もうと学んでいます。
    学びの中で一番が、焦らないで作業をする事が重要と知りました…
    人との関わりで、サポートをするとありがたいと思います、普通に思いますが…中には
    ありがた迷惑と思う人もいます…
    良かれと思いサポートをして、実際にはどう思われていたのか私も分かりません、
    難しいですネ
    仲が良くなり近い距離の人は特にだと思います、仕事の関係ですと、サポート出来る事はやる
    利用者が出来る事はなるべく利用者がやるようにする…運動をする機能を低下させないようにする事も重要ですネ
    時間の気にし過ぎで、焦る事がありますので、私は気を付けています…
    自分の振り返りを考える良い機会になりました…



  • #2

    生江規子 (水曜日, 25 9月 2024 15:32)

    中川剛充 様
    コメントを下さってありがとうございます。
    中川さんも介護についての学びをされたのですね。
    そして相手の気持ちや状態を考えることを、大事になさっているご様子がよく伝わって参りました。
    人と人との関わりは本当に難しいですが、そこから学ぶことや気づくことはたくさんありますね。
    中川さんがお書きになっているように、焦らずに少しずつ大切に進めていきたいと私も思っています。