【心に残る康麿先生のことば「自分以外の人は気にくわない」その2】森島文子

イメージ写真
写真はイメージです(PhotoACより)

こんにちは。

セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。

 

ホームページのリニューアルに伴い、2022年5月から理事、監事が交代でブログに投稿することになりました。

 

内容はセルフ・カウンセリングに関わって感じた各人の感想、思いつき等なんでもありです。

あくまでも個人としての自由な意見・考え方です。

セルフ・カウンセリングを学ぶ上で、皆様の参考になれば幸いです。

 

今回の担当は前回に引き続き、普及協会の理事、一般社団法人生涯学習セルフ・カウンセリング®学会会長の森島文子さんです。

 

 

心に残る康麿先生のことば

             森島文子

渡辺康麿先生は、セルフ・カウンセリングの方法と理論を創った方です。

私たちは、親しみを込めて、“康麿先生”とお呼びしていました。

生前、康麿先生は精力的にセルフ・カウンセリングの教育普及活動をしておられました。

具体的には、数多くの講座や講演会でセルフ・カウンセリングについて語り、その方法を私たちに手ほどきしてくださいました。

私も、学習者の一人として、先生から様々なお話をお聞きしてきました。

その中で、私の中に印象的に残っている先生の言葉がいくつもあります。

今回は、その中から、二つの言葉を選んで、ご紹介したいと思います。

 

第二回

「自分以外の人は気にくわない」 その2

 

康麿先生のおっしゃった「人は基本的に自分以外の人は気にくわないんだよ」という言葉について、セルフ・カウンセリングの理論に沿って考えてみたいと思います。

セルフ・カウンセリングでは、私たちは、一人一人、異なったモノサシを持っている、と考えています。

なぜなら、私たちは、それぞれが異なった経験を積み重ねて今ここに立っているからです。

私たちは、その異なった経験の中から、様々なモノサシを取り込んで身につけてきています。

私たちは、誰一人として同じ経験をした人はいません。それと同じで、同じモノサシを持っている人もこの世に一人としていないのです。

 

そして、私たちは、自分と同じものを好ましく感じ、自分と異なるものに好ましくないと感じる傾向があります。

自分と同じようなモノサシを持っている人とは気が合うと感じ、仲良くなることができます。

自分とは大きく異なるモノサシを持っている相手とは、気が合わないと感じて距離をとるようになります。

けれども、たとえ気が合うと感じた相手であっても、つきあいを深めていけば、同じだと思っていたモノサシにも細かな差異があることが見えてきます。

すると、〈こんな人だとは思わなかった〉と、ガッカリしてしまいます。

 

先生の言葉は、そんなことを端的に私たちに伝えていたのかもしれないなと感じていまます。

一見、シニカルに人間を捉えているような言葉ですが、先生は“自分以外の人を嫌いだから、人間は分かりあえない”とおっしゃっているのではないように思います。

言い方が複雑になりますが、“自分以外の人を嫌い”という点では、私たちは共通しています。

つまり、自分が一番大事という感覚は、私たちが誰でもが持っているもの。

あまりに当たり前のことなので、普段は自覚することもないでしょう。

けれども、自分の心を自ら見つめてみれば、そんな気持ちに自分で気づく事ができます。

気づく事で、そのような自分の傾向を、距離をとって客観的に見つめ、受けとめることができます。

すると、自分だけでなく、他の人たちの中にも、同じ傾向があることが見えてきます。

そこから、他の人に対する深い共感が生まれてくるのではないでしょうか。

セルフ・カウンセリングは、まさにそのような共感にもとづく他者との交流が実現するように創られています。

“自分以外の人を気にくわないと感じる”。

そんなふうに感じる人間という存在を、丸ごと受けとめて、その存在をいとおしむような気持ちを、私たちは持つこともできるのだ。

そんなことを康麿先生は、セルフ・カウンセリングを通して私たちに伝えてくださっているのかもしれません。

 

                                   (つづく)

 

コメントをお書きください

コメント: 4
  • #1

    永野秀則 (水曜日, 06 7月 2022 21:42)

    かなり深く深層心理について分析していらっしゃるのですね。私もフロイトとユングの本を読んだことがあるのですが、かなり分厚い本だったのでおぼろげにしか覚えていませんが、フロイトの説が正しいのかなと感じました。

  • #2

    関香澄 (木曜日, 07 7月 2022 12:27)

    自分以外は嫌いと言うのはわかるような気がします。

    多分、自分はできるのに人はできないっということが受け止められない時も同じかな?と思うのは違うのでしょうか?

    そんな時、嫌いだと思うことがありました。

    歳を取ると考えなくなってきたのでしょうか?

    余り、気にしなくなりました。

  • #3

    森島文子 (木曜日, 07 7月 2022 17:46)

    永野様
    さっそくコメントをいただき、ありがとうございます。永野様は、フロイトとユングの本を読んだ事があるのですね。人の心にご興味をお持ちで、深く学ぼうとされていたのでしょう、と拝察致しました。
    渡辺康麿先生は、一つの人間観に基づいてセルフ・カウンセリングの方法を創り出されました。
    今回のブログの内容も、その人間観に基づいています。
    そんなセルフ・カウンセリングの人間観に関心を持っていただけたら、とても嬉しく思います。

  • #4

    森島文子 (木曜日, 07 7月 2022 17:53)

    関香澄様
    コメントをありがとうございます。
    自分はできるのに人はできない、ということが受けとめられない、ということ。
    お気持ち、よく分かるなと思いました。
    人は、自分を基準にして、周りの人を評価してしまうものなのでしょうと思います。
    私などは、子育て中によくこんな気持ちになりました。
    自分と子どもを比べてしまって、「お母さんが、あなたぐらいの頃は、もっとちゃんとしていたわ!」などと言ってしまったり。
    そんな自分の心の動きに自分で気づくことができると、ちょっと立ち止まる事ができます。
    年齢を重ねると、そんな心のゆとりが生まれてくるのかもしれませんね。