こんにちは。
セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。
ホームページのリニューアルに伴い、2022年5月から理事、監事が交代でブログに投稿することになりました。
内容はセルフ・カウンセリングに関わって感じた各人の感想、思いつき等なんでもありです。
あくまでも個人としての自由な意見・考え方です。
セルフ・カウンセリングを学ぶ上で、皆様の参考になれば幸いです。
今回の担当は前回に引き続き、普及協会の理事、一般社団法人生涯学習セルフ・カウンセリング®学会会長の森島文子さんです。
4回連載のうちの最終回 心に残る康麿先生のことば「それを私は決心病と呼んでいます」その2をご紹介します。
心に残る康麿先生のことば
森島文子
渡辺康麿先生は、セルフ・カウンセリングの方法と理論を創った方です。
私たちは、親しみを込めて、“康麿先生”とお呼びしていました。
生前、康麿先生は精力的にセルフ・カウンセリングの教育普及活動をしておられました。
具体的には、数多くの講座や講演会でセルフ・カウンセリングについて語り、その方法を私たちに手ほどきしてくださいました。
私も、学習者の一人として、先生から様々なお話をお聞きしてきました。
その中で、私の中に印象的に残っている先生の言葉がいくつもあります。
今回は、その中から、二つの言葉を選んで、ご紹介したいと思います。
第四回
「それを私は決心病と呼んでいます」その2
失敗した時に、同じ事は繰り返さない!と決心すればするほど、同じことを繰り返してしまう。
そのような状況に陥ることを、康麿先生は“決心病”という言葉で私たちに伝えてくださいました。
その“決心病”は、どのような点に問題があるのでしょうか。
“決心病”の問題点について、康麿先生は、次のように説明してくださいました。
「決心病は、失敗した時の苦い感情から逃れるための手段となっています。
本当に同じ失敗をしたくないのであれば、失敗した時の苦い感情を充分に味わう事が大切です。
充分に味わって味わい尽くした時、自分の中から、次はこうしようという新しい意欲が生まれてくるのです」
〈次は失敗しないぞ〉と思う時、私たちの視線は“これから”という未来に向かっています。
つまり、“今、この時”に向けられてはいないのです。
未来に思いを馳せることは、一見すると前向きで良い事のように思えます。
けれども、今味わっている“失敗した〜”という苦い感情と失敗した出来事そのものから逃れるために、未来を思い描くとしたら、それは現実逃避の手段になってしまうのではないでしょうか。
康麿先生は、そのような苦い感情と失敗した経験そのものをじっくり味わい、味わい尽くすことができる方法として、セルフ・カウンセリングを創り出されたのでしょう。
セルフ・カウンセリングでは、〈ああ、失敗してしまった〉という、その時の実感をじっくり味わい、言葉で表現します。さらに、その思いの奥にある感情や欲求を洞察します。
そこまで自分の心を理解し、受けとめる事ができた時、初めて〈今度はこうしてみよう〉という、問題解決の意欲が生まれてくるのではないでしょうか。
セルフ・カウンセリングは、自分の経験を思い返して、受けとめることを大切に考えています。
それは、一見すると過去にこだわる作業のように見えます。
もし、私たちが、過去の自分の行動について、それが良かったか、悪かったか、という評価を下すために振り返るとしたら、私たちは、過去の経験へのこだわりをより強くせざるをえないと言えるでしょう。
けれども、セルフ・カウンセリングでは、良かったか、悪かったかの評価を脇において、その時自分がどう感じたのか、という実感そのものをじっくりと味うように創られています。
じっくりと味わい、〈ああ、この時こんなふうに感じたんだな〉と受けとめる事ができた時、私たちは過去の自分を真に受けとめる事ができます。
そして、過去の自分を受けとめる事ができた時、初めて私たちは過去から自由になる事ができるのではないでしょうか。
セルフ・カウンセリングは、過去を振り返り受けとめる事で、新しい未来への可能性を手に入れる方法なのだと思います。
康麿先生は、新しい未来を取り戻す方法として、セルフ・カウンセリングを創ってくださった。
今、私はそう感じています。
(完)
4回連載「心に残る康麿先生のことば」をお読みいただきありがとうございます。
第一回「自分以外の人は気にくわない」その1
第二回「自分以外の人は気にくわない」その2
第三回「それを私は決心病と呼んでいます」その1
第四回「それを私は決心病と呼んでいます」その2
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