― あるケアマネージャーのセルフカウンセリング体験 ―
自分の既成概念に気づき、自分と相手をともに活かす交流をめざす
『セルフカウンセリング』を普及するNPO法人です。
コロナ禍で新しい職場に活路を見出す方も増えているようです。
新しい職場では、前の職場との違いに戸惑いや不満を感じることがあるかもしれません。
新しい職場に入社した竹下さんの体験を紹介しましょう。
私は10年間ケアマネージャーとして介護の仕事をしてきました。
事業所移転に伴い、長年勤務した事業所を離れ、新天地を求めて別の事業所に入社しました。
新しい事業所は入居者様も、お世話をするスタッフの介護の仕方も、私が長年勤めた事業所とは全く異なっていました。まるで別世界のようでした。
その違いにカルチャーショックを受けました。
そんなある日、事業所の責任者から服装について注意がありました。
責任者の松田さんは、「もっと、地味な服装にしてください。入居者さんや家族の目もあるし他のスタッフの目もありますから」と言いました。
私はゴルフが好きだったため、ゴルフウェアを仕事着にしていました。
私は「スポーティーな服装が好きだし、足に静脈が出るのを防ぐために、着圧式の服を着ています」と言いました。
松田さんは「とにかく派手な服はやめてください」と言いました。
私は、自分の事情を全く無視されたと感じました。
松田さんの言葉は、とても受け入れがたく憤慨しました。
このことを同僚の木村さんに話しました。木村さんは今の職場で一番頼りにしている方です。
木村さんは「どちらも間違っていないと思う。あなたは、何をどうしたいと思っているの?それが分かると気持ちが落ち着くわよ。」と言われました。
木村さんはセルフカウンセリングという方法を教えてくれました。
セルフカウンセリングで自分の気持ちを書き出してみると、今まで、怒りで見えなかった自分の気持ちが整理されてきました。
私は次のように自分の「こうしたい」という気持ちを書きました。
〇スポーティーな服が着たい。
〇服装のことで人から、とやかく言われたくない。
〇私には私の事情があることを分かってほしい。
〇入居者さんに、まともなお世話もできない人に注意されたくない。などなど。
私は自分で書いたものを読み返しました。
私は、もともと入居者さんへの支援の仕方に不満があったため、松田さんの言葉に怒りを感じたのだということに気づきました。
もともと不満があったところに服装のことを注意されたため、一気に不満が爆発したことにも気づきました。
私は自分が気づいたことを木村さんに話しました。
すると、木村さんは「服装のことより入居者さんへの支援の仕方に不満があったのね。よく気づけたわね。服装は着圧式のストッキングに変えるとかいろいろ方法はあると思う。入居者さんの支援の件は、今度ミーティングでみんなと話し合って一番入居者さんに合った支援の方法を統一するというのはどう?」と言われました。
お陰で、すっかり怒りは収まり、気持ちが楽になりました。
セルフカウンセリングについて、もっと知りたいと思いました。
自分の怒りの奥には、こうしたい、こうしてほしいという願いが潜んでいます。竹下さんのように自分の願いが明らかにできると、怒りの本当の原因が見えてきます。怒りの原因を突き止めることができると気持ちが落ち着くため、状況は変わらなくても、目の前のことを受けとめて対応していけるのです。
(セルフカウンセリングは商標登録されています。)