自分の問題に向き合えるように(2)

写真はイメージです(イラストACより)
写真はイメージです(イラストACより)

セルフカウンセリング®という心理学(自己発見心理学)に基づいて、企業研修としてコミュニケーショントレーニングを行ったり、コミュニケーショントレーナーの資格取得のためのセミナーを企画運営しているNPOです。このコラムでは、セルフ・カウンセリングにまつわる様々な情報をお伝えしています。

 

 

7月のブログは多感な時期である学生との関わりをテーマに「スクール相談員の体験記」をお届けします。この体験記は学事出版 月刊生徒指導に掲載されました。

 

前回のあらすじ

裕子さんは中学生になって間もなく不登校になり「心の相談室」で相談員の丸山さんとセルフ・カウンセリングを通して少しずつ硬くなった心がほぐれていきますが、卒業写真を撮影することになり、再び裕子さんの心が落ち着かなくなります。

家族や担任、クラスメイト側の気持ちや思いやりとは裏腹な裕子さんの心のセリフ。

 

「写真なんか撮りたくなかったのに。本当に、思い出なんか、思い出なんか、いらなかったのに・・・」

  

自分の問題に向き合えるように(2)

 

見栄を張っていたのかもしれない

 

その後、丸山さんの提案で、裕子さんは自己形成史の記述に取り込むようになりました。

子どものころから今に至るまで、自分の心に残った場面を、裕子さんは学校の相談室の丸山さん宛に郵送してきました。

裕子さんが書き送ってきた場面を読むと、すぐに丸山さんは受け止めと問いかけの返事を書きそえて送り返しました。

セルフ・カウンセリングにもとづくレターのやりとりの中で、裕子さんはいろいろなことに気づいてゆきました。

たとえば、自分が小さいころから親に甘えてきたこと、まわりの人のこと、いつも気にしていたこと、まわりの人の期待に合わせてきたこと、などなどです。

あるとき、裕子さんは、次のように書き送ってきました。

 

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先生、私って、とてもプライドが高いのかもしれません。

学校に行かなくなったのは、みんなから無視されて、人が怖くなったからだけど、今は、安心できる友達なら一緒にいたいんです。

でも、みんなと同じように学校生活して来なかった自分、みんなに後れをとってしまった自分をどうしても許せないんです。

自分のことをみんなによく見せたい気持ちがとっても強いのです。

それで<クラスに入れない>と思ったり、<卒業写真は撮りたくない>と思ったりしていたのかもしれません。

************

 

これが私の卒業写真

 

裕子さんは、自己形成史を書くワークを三か月ほど続けました。

そして、自分で通信制高校へ進むことを決めました。

ある日、丸山さんのもとに裕子さんからこんな感想文が届きました。

 

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きっと、自分の「ありのまま」の気持ちを分かってくれる友達がほしかったんです。

でも、自分を実際の自分以上によく見せたいと思いすぎて、いつの間にか友達に自分の本当の気持ちを話せなくなってしまったのです。

でも、心配してくれている友達や先生の気持ちにこたえなくてはいけないと思って、死んだつもりになってアルバム写真を撮りにいきました。

写真を撮った後は、今のダメな自分がアルバムに残ってしまうんだと思って、いてもたってもいられないぐらい落ち着かなくなってしまったんです。

でも、自分の昔からの歴史をかいてきて、自分を「ダメだ」と決めつけているのは自分なんだとわかりました。

結局、私は人の目はかりを気にしていたんです。

丸山先生に「自分の人生は誰とも比べることのできない、かけがえのない自分の人生なんだ」って言われて、本当にそうだと思いました。

私の道を歩むのは私なんだと気づきました。

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この手紙を丸山さんは裕子さんの了解を得た上で担任の先生に見せました。

担任の先生は「彼女の将来のためにと私なりに考えていました。

でも、本人がどう感じているのかということは、まったく頭にありませんでした」と言いました。

少し間をおいて担任の先生は「卒業式は本人の気持ちを尊重するようにしたいと思います。

クラスのみんなにもムリに誘わないようにと言うつもりです」と言いました。

 

裕子さんは卒業式に参加しました。

卒業式が終わった後で裕子さんは丸山さんのところにやって来ました。

裕子さんは「あの卒業アルバムの写真では私の顔がヒキツリ笑いになっちゃってました。

だから、これが私の本当の卒業写真です」と言って、丸山さんに一枚のプリクラを差し出しました。

そこにはにっこりと微笑している裕子さんの顔が写っていました。

 

「これ、友達と撮りに行ったんだけど全然疲れませんでした。

最近一人でいてもイライラしなくなりました。

自分の進路とかも落ち着いて考えることができたんです。

今の自分には通信制の高校に行くのが一番いいと思って決めたんです」と裕子さんは言いました。

 

丸山さんは

<自分をよく見せなくてもいいと思ったら友達とのつきあいが楽になったんだな。

裕子さんは自分の道を自分で決めたんだ。

この経験は裕子さんの自信になってゆくだろうな。本当によかった>

と思いました。

 

 終わり

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コメント: 2
  • #1

    東 由紀子 (水曜日, 26 7月 2023 09:32)

    スクールカウンセラーになりたいう
    気持ちが大切ですね。メールを見て元気になりました。ますますスクールカウンセラーになりたいなと思えるようになりました。元気をもらえました。

  • #2

    ブログ担当者より東様へ (木曜日, 27 7月 2023 14:46)

    東様
    ブログへのメッセージありがとうございます。
    東さんが仰る通り、気持ちが大切ですよね。
    ブログを見て元気になったお気持ちをお知らせ下さり、ありがとうございます。
    引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。